免疫細胞療法

2021-09-12 21:21:48

免疫細胞とは

わたしたちのからだは、多種類の免疫細胞によって、侵入した細菌やウイルス、遺伝子変異により発生したがん細胞の増殖から守られています。その細胞は、「単球」「リンパ球」「顆粒球」の3種類に大きく分けることができます。さらに単球はマクロファージ/樹状細胞、リンパ球はT細胞/B細胞/NK/NKT/γδT細胞等、顆粒球は好中球/好酸球/好塩基球に分けられ、それぞれの働きは異なります。

単球

マクロファージ:体内に侵入してきた異物を貪食処理します。また、貪食処理しきれない場合にはヘルパーT細胞に抗原提示して情報を伝達し、寿命がきた赤血球や白血球、死滅した細胞やがん細胞などを除去する働きがあります。
樹状細胞は強い抗原提示細胞として機能する免疫細胞の一種であり、哺乳類の免疫系の一部を担っています。外界に触れる皮膚、鼻腔、肺、胃、腸管に存在し突起をもっています。

リンパ球

T細胞は3種類あります。
ヘルパーT細胞:マクロファージから助けを受けるとB細胞に抗体を作るように指令をだします。マクロファージや樹状細胞が提示する抗原により活性化し,インターロイキンを産生します。
キラーT細胞:ウイルス感染した細胞や癌細胞を死滅させます。
サプレッサーT細胞:細胞を過剰に死滅させないように抑制します。
B細胞:細菌やウイルスなどの抗原に応じた抗体を作ります。
ナチュラルキラー(NK)細胞:感染した細胞やがん細胞を死滅させます。キラーT細胞とは異なり、独自で感染細胞やがん細胞を探し、指令などは受けず単独で死滅させます。

顆粒球
好中球は:主に細菌やカビを貪食処理します。
好酸球:アレルギーなどの際に増加し、ヒスタミンを不活性化します。弱いですが貪食能力もあります。
好塩基球:ヒスタミン等を含有し、抗炎症反応に関与します。

わたしたちのからだの中のリンパ球の70~80%は「T細胞」、5~10%は「B細胞」で、残りの15~20%は「NK細胞」です。NK細胞は、NKT細胞系列の進化において最初に生まれたリンパ球です。
NK/T細胞とは、NK細胞とT細胞の両方の性質をあわせ持つ、新たに分けられたリンパ球で、強力な免疫作用があり、自然免疫系と獲得免疫系の両方の細胞を活性化させます。

福岡MSC医療クリニック|医療法人聖慈会

1.免疫細胞治療とは

人の体に本来備わっている自然治癒力の主体となる免疫の働きを強化して、免疫機能を目的の方向に導く治療を免疫治療といいます。特に、体外で培養して活性化増殖させた免疫担当細胞を用いる治療を免疫細胞治療といいます。

2. NKT細胞標的治療とは

ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)は、がん抗原を提示する HLAの発現が消失したがん細胞を見つけて攻撃するNK細胞と、HLAを発現するがん細胞を攻撃するT細胞を同時に活性化できるために、高い抗腫瘍効果が期待されています。

また、NKT細胞は、T細胞やNK細胞など他の免疫細胞を活性化するアジュバント効果も持っています。そこで、NKT 細胞標的治療では、患者様から単球を採取し、それを樹状細胞(DC)に分化させ、特異的リガンドをパルスして DCワクチンを調製し、皮下接種による投与を行います。

3.当院での治療

1) 治療内容

NKT 細胞標的治療において、患者様から採血を行い、単球を採取します。この単球を樹状細胞に分化させ、特異的リガンドをパルスして DCワクチンを調製し、数週間毎に計4回の皮下接種によるDC ワクチン投与を行います。病態と治療上の必要に応じて採血を実施しさらに4回の DC ワクチン接種を追加することもあります。

2) 樹状細胞(DC)ワクチンの培養について

DCワクチンの培養は、医療法人聖慈会 福岡MSC医療クリニック(厚生労働省細胞培養加工施設届 出番号:FC7170004)に併設されている専用のクリーンルーム内で高度な技術管理のもとに実施しますが、DC ワクチンの分離、回収や刺激、調製は採取した血液の状態にも依存するため、得られる樹状細胞の性状や数は一定ではありません。培養の過程での病原菌などの混入の防止については、現時点でのできる限りの対策をとっています。無菌検査、発熱物質の混入の有無を調べ、合格したもののみを 治療に供します。樹状細胞数が十分に確保できない、検査に合格しない、あるいはその他の理由により予定した日程どおりに治療が行えない事態が突然に発生することもあります。これらの点は予め十分にご了承下さい。

3) 有効性に関して

NKT 細胞標的治療は、それぞれの患者さんの病状や進行度、血液状態などに対応して、治療によって得られる効果にも個人差がありますので、あらかじめご了承ください。

4) 副作用について

DC ワクチンを投与した後に軽い発熱や倦怠感が起こることがあります。これは培養中に用いる活性化 物質や DC ワクチンそのものの作用、もしくは NKT 細胞の癌細胞への攻撃反応などから起こり、多くの 場合は 38℃未満で 1 日~2 日以内に解熱するもので、治療上の不利にはならないと考えられています。 また、ごく稀にア レルギ一反応と思われる症状の出現をみることもあります。このような症状は一時的かつ可逆的なもので、解熱対策や抗アレルギー対策などをはじめ慎重かつ適切に対処いたしますが、場合によってはDCワクチン投与の延期や中止をすることもあります。また治療には、医療安全管理上において最善を尽くしますが、採血や注射などに関する取り扱い等の過誤を含む治療に伴う様々な危険性、合併症その他の通常起こりうるリスクについては、あらかじめご了承ください。

4.他の治療との関係

化学療法、放射線療法、手術、その他の治療を行っておられる場合、または行う予定のある場合には、可能な限り、それらの治療スケジュールに応じた最適のDCワクチン接種時期や投与間隔を決めていきます。他にも有効な治療法のある場合は、その治療との併用に関する相談やアドバイスもいたします。

5.当院の治療の中止について

貴方の希望、意志によって当院の治療はいつでも中止することができます。中止することで治療上の不利益は生じませんし、中止した反動や副作用なども起こりません。

6.治療終了後の調査についてのお願い

当院治療の中止や終了後にも、お電話やお手紙によって貴方の病状経過をお尋ねし 、検査結果を拝見させていただくことがあります。その際は、差し支えない範囲で構いませんので ご協力下さいますようお願いいたします。

7.貴方のプライバシー保護等について

貴方の治療によって得られた貴方に関する情報を洩らすことはありません。私たちには守秘義務も 課せられております。ただし、医学および免疫細胞療法の発展進歩のための研究として、個人が識別 できないよう に貴方のプラ イ パシ一保護に十分配慮して、データを治療以外の目的で使用・ 発表することがあり ますので、ご了承ください。

8.費用に関して

NKT細胞標的治療を含め、当院での免疫治療には健康保険が使えませんので 、全額自費負担となり、所定の消費税もかかります。
治療中止を希望された場合でも、採血や培養等の治療費は返金いたしかねますので、あらかじめご了承ください。

提供する再生医療等

自己樹状細胞による自己NKT細胞標的療法

生医療等の分類

第三種

再生医療等提供計画番号

PC7180012

治療までの期間

採血から細胞投与まで:約3週間程度
初回治療から次回治療までの期間:約1ヶ月半以降

細胞投与時の所要時間

45分程度

治療等のリスク・副作用

採血の際:
創部からの出血、脂肪採取部の皮下出血、創部の痛み・感染

細胞投与の際:
発熱、アナフィラキシー反応、肺塞栓、呼吸困難、血圧低下、血圧上昇、頭痛、冷汗、嘔気、嘔吐、腹痛、神経障害、発疹、掻痒感、浮腫、倦怠感など

幹細胞培養上清液

近年、脂肪組織に由来する間葉系幹細胞についてはその特性に関する研究が盛んに行われており「ヒト脂肪由来幹細胞培養上清」に含まれる、各種の成長因子群、生理活性物質や細胞外たんばく質についても様々な研究成果が報告されています。

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培養上清液とは

福岡MSC医療クリニック|医療法人聖慈会

幹細胞を培養し、遠心分離し、細胞や不純物を取り除いた上澄みの部分が「上清液」です。

この上清液にはサイトカインが豊富に含まれています。

サイトカインとは幹細胞を培養するときに、幹細胞が分泌する成分のことです。

この成分は、タンパク質成分が含まれており、そこにはサイトカインと呼ばれる細胞活性のカギとなる情報伝達物質が豊富に含まれています。

サイトカインは、体内の損傷を受けた組織や細胞の機能回復に重要な役割を果たし、老化などにより衰えた細胞の回復を後押しするため、さまざまな効果が期待できます。

自己幹細胞由来サイトカイン(成長因子)は化学的合成法(アミノ酸を使用したサイトカインの合成や遺伝子組替え方法)で生産されたサイトカインと比較すると、生体内本来のサイトカインであることから適合性に優れている利点があります。

EGF

(上皮細胞増殖因子)

・表皮細胞を増殖する成長因子

・肌のターンオーバーを促進

βFGF

(塩基性繊維芽細胞増殖因子)

・血管内皮細胞の増殖と血管新生を促す

・コラーゲンを産生する繊維芽細胞の増殖を促す

成長因子

・組織修復や神経保護作用

HGF

(肝細胞増殖因子)

・肝細胞の増殖を促す成長因子

・正常な肝細胞を増やす事で肝硬変や慢性肝炎を防ぐ

TGF-b

(トランスフォーミング

増殖因子)

・組織発生、細胞分化、胚発育において重要な役割を果たす。

・抗炎症効果がある。

VEGF

(血管内皮細胞増殖因子)

・新生血管の形成に作用する。

PDGF

(血小板由来増殖因子)

・損傷を受けた皮膚細胞の再生を促進する。

GM-CSF

(顆粒球単球コロニー増殖因子)

・顆粒球、単球マクロファージの増殖誘導因子

点滴による投与

点滴などの溶液に培養上清液を入れて、ゆっくりと静脈内に投与します。

培養上清液に含まれる多種多様のサイトカインが、体内の損傷している部位の細胞を活性化し、様々な老化現象を改善することが期待されます。


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